What is Dravet Syndrome?

Click the link below if you would like to know about Dravet Syndrome.
https://www.dravetfoundation.org/what-is-dravet-syndrome/

疾患概念

1978年に「乳児重症ミオクロニーてんかん」が報告・名付けられましたが、ミオクロニーがなく臨床像が同様の経過をたどる症例が多いこと、てんかんが成人期にも存在することが明らかとなったため、最初に医学雑誌に記載した Dravet 先生の名前を冠し1989年に「Dravet 症候群」となりました。

臨床現場では「Dravet 症候群」の名称に移行していっていますが、保険病名や福祉制度の申請に使う病名は「乳児重症ミオクロニーてんかん」「重症乳児ミオクロニーてんかん」で登録されていることが多いのが現状です。
※)難病指定は「ドラべ症候群」が登録病名になっています

 

発生率

Dravet 症候群は乳児期に発症し難治な経過をたどる稀なてんかん症候群で、2万人~4万人に一人の発生率となります。

 

発作

1 歳未満で最初の発作がおこり、片側性もしくは全般性の間代性けいれんを繰り返し、重積(※)・群発(日に何度も発作を繰り返す状態)傾向があるのが特徴です。

※重積…発作が一定時間以上止まらないものをいいます。これまでは 30分以上とされていましたが近年は5分以上続けば重積と判断し治療を始めるように推奨されています。

国際抗てんかん連盟(ILAE) の基準から2010年に日本小児神経学会より重積治療のガイドラインが示されています。
http://www.neurology-jp.org/guidelinem/epgl/sinkei_epgl_2010_09.pdf

1歳頃からけいれん発作のみならず、ミオクロニー発作や非定型欠神発作、焦点性発作(いわゆる単純部分発作、複雑部分発作)が出現し精神運動発達も停滞します。動画による発作の解説はこちらをご参照ください。
http://www.tenkan.info/about/epilepsy/about_04.html

全般性や片側性けいれん発作と焦点発作のみ呈し、ミオクロニー発作や非定型欠神発作を併存しない症例も存在します。

全身けいれん発作は学童期以降に軽減傾向となりますが、発熱時や睡眠時の発作は成人期にも引き続き見られます。

 

治療

抗てんかん薬治療に抵抗性で非常に難治性です。多剤併用療法をしている方がほとんどです。
多剤併用でも効果が十分でない場合は食事療法(ケトン食・修正アトキンス食・低 GI 食)の併用が有効な場合があります。

テグレトール、ラミクタール、アレビアチン、ホストイン、ガバペン、イノベロン、サブリル(全て商品名)が小児において発作を悪化させることがあり注意が必要です。

 

予後

成長するに従って小脳失調(ふらつきや構音障害)や手先の不器用さ、多動、知的障害や自閉性障害があきらかとなります。
幼児期からリハビリ(言語療法:ST、作業療法:OT、理学療法 : PT、感覚統合:SI 等)や集団療育をしている患児を多く見られ、その有効性も評価されています。
中等度以上の知的障害を持つ患者が大多数ですが、近年では治療薬の進歩や早期からのリハビリや療育への取り組みによる恩恵もあるためか発作や知的予後の良い症例も報告されています。

てんかんの中でも死亡率は最も高く、約10%です。
原因は突然死、てんかん重積を伴う急性脳症、溺死、不慮の事故などが多く報告されています。

乳児期発症のてんかん性脳症(てんかん性活動そのものが背景病理から予想される以上の認知や行動の重篤な障害をもたらし、時間とともに悪化しうる状態)に含まれます(2001年、国際抗てんかん連盟:ILAE http://www.ilae.org/)。
つまり、てんかん性活動を抑えることで認知・行動の障害を改善できる可能性があります。

 

診断について

診断基準は明記されていませんが、診断は経過とともに進展する臨床的特徴や脳波所見、遺伝子検査から総合的に行われます。
最近になり1歳までの経過によるスクリーニングテストが開発され、早期診断に有用とされています。

病態

先天的なナトリウムチャネル遺伝子 SCN1A 異常による GABA 作動性介在ニューロンの機能障害が原因と考えられています。(SCN1A 遺伝子変異を伴わない症例も20-30%あります)

GABA は抑制性の神経伝達物質です。
この GABA 作動性介在ニューロンの機能障害自体により、自閉性発達障害が引き起こされている可能性が本症動物モデルで明らかになっています。 Dravet 症候群の患者の約80%に、SCN1A 遺伝子変異を認めます。
変異を認めた 90%以上は Dravet 症候群、約10%は全般てんかん熱性けいれんプラス(GEFS+)、Doose 症候群等です。また SCN1B、SCN2A、GABRG2 遺伝子変異の症例報告があります。

~SCN1A 遺伝子変異とは~ (図1)

図1:遺伝子変異によって起こる受容体形成異常のイメージ図電位依存性ナトリウムチャネル Na1.1 のαサブユニット(図2,3参照)という蛋白をコードする遺伝子の変異です。
ナトリウムチャネル Na1.1 のαサブユニットはモデルマウスでは抑制性ニューロンの軸索と細胞体に優位に発現します。

 

図2:電位依存症ナトリウムチャネルNa1.1のαサブユニット(直列模式図)

図3:電位依存症ナトリウムチャネルNa1.1のαサブユニット(立体イメージ図)

  1. 脳の抑制性細胞を働かせる為には細胞内外の電位の差などによって細胞外のナトリウムイオンが細胞内に流入することが必要
  2. しかしナトリウムイオンが細胞内に入る時に通過する入口の一部(αサブユニット)の設計図(SCN1A 遺伝子)が正常とは違っているので入口が変形して作られてしまい、ナトリウムイオンが流入できない
  3. すると抑制性神経細胞が働かなくなる
  4. よって興奮性神経細胞>>抑制性神経細胞というバランスになってしまい、発作が抑制されにくくなる(図4)

と考えられています。

図4:抑制性神経細胞と興奮性神経細胞

そのゆえ小児の場合では Na チャネルブロッカーの薬の中でもテグレトール(カルバマゼピン:CBZ)とラミクタール(ラモトリギン:LTG)、アレビアチン(フェニトイン:PHT)、ホストイン(ホスフェニトイン:proPHT)は症状を悪化させる可能性があります。(他、ガパペン:ガバペンチンGBP、イノベロン:ルフィナミドRFM、サブリル:ビガバトリンVGB も悪化させる可能性あり)
日本では、複雑焦点性発作の第一選択薬がテグレトール、改善が見られない場合はラミクタールの併用となっている事が多く、症状を増悪させる場合がありますので注意が必要です。

診断方法

この病気は強い発熱過敏性(発熱による発作誘発)を認める為、熱性の場合は単純型熱性けいれんよりも遷延する傾向があり、けいれん重積状態や群発状態を多く起こします。

1歳未満で38℃台での熱性痙攣を起こした場合や、左右の一定しない半身けいれんを起こしたり、入浴時や入浴後にけいれんを起こした場合(入浴誘発発作)はDravet症候群を疑う有用なポイントとなります。

体温が上昇することが発作を起こす誘引のひとつとなります。

遺伝子変異の有無が明らかでなくても臨床症状をみて経験のあるてんかん専門医により診断が付けられます。遺伝子変異の有無は診断には有用ですが、遺伝子変異が診断の必要条件でも十分条件でもありません。

遺伝子検査には時間がかかるため、結果を待っている間(約半年~1年)に治療の好機を逃す可能性もあります。しかしながら遺伝子変異が原因と明らかになっているてんかんの中で最も治療研究が活発に進められているてんかんの一つが Dravet症候群です。

遺伝子検査を受ける事は今後の治療研究の推進のみならず治療法が明らかとなった場合の対処法を考える上では必要不可欠です。

Dravet症候群に特化した治療を早期に開始するための早期診断が重要です。

 

・1歳未満におけるドラベ症候群のスクリーニング項目(岡山大学 大守伊織先生らによる)難病情報センターより抜粋

危険因子 点数
発症月齢が7ヶ月以下 2
発作回数5回以上 3
半身けいれん 3
部分発作 1
ミオクロニー発作(ピクン) 1
遷延性発作(10分以上) 3
入浴誘発発作 2

6点以上の場合は感度97.8%、特異度94.0%でドラベ症候群の可能性が考えられ、SCN1A遺伝子検査の施行が推奨されています。

 

・診断の手引き(小児慢性特定疾病情報センターより抜粋、文責:日本小児神経学会)

Ⅰ.主要臨床症状

  1. 乳児期より入浴・発熱で誘発されやすい部分、一側性あるいは全般性の間代発作を繰り返し抗てんかん薬に抵抗する。
  2. 発作は、長時間持続しやすく発熱時には容易に30分以上続く重積状態となる。
  3. 1歳頃からミオクロニー発作、非定型欠神発作、複雑部分発作が出現する。
  4. 1歳頃から知的発達が伸び悩み、歩行獲得しても失調性となる。

Ⅱ.他の重要な臨床所見および検査所見

  1. 脳波 :1歳までは正常であるが、1歳以降に背景活動徐波化、広汎性(多)棘波複合、多焦点性棘波が年齢に伴って消長する。
    一部の例では1歳を過ぎてから強い図形過敏性、光過敏性を伴う。
  2. MRI :乳児期は正常だが幼児期以降は非特異的萎縮が多く、海馬硬化を伴うことがある。
  3. 遺伝子:SCN1A 遺伝子のヘテロ変異を 70~80%に、微小欠失を数%に認める。SCN1A 遺伝子異常の 90%以上が Dravet 症候群である。 SCN1B、SCN2A、GABRG2 変異の報告も稀にある。

Ⅰ.の全てを満たす場合、あるいはⅠ.の1.とⅡ.の3を満たす場合、Dravet 症候群と診断する


参考資料
てんかん症候群 乳児期・小児・青年期のてんかん学(第5版) 中山書店
子どものけいれん・てんかん 奥村彰久 浜野晋一郎 編集 中山書店
稀少難治てんかん 診察マニュアル 大槻泰介 須貝研司ら 編集 診断と治療社
一般社団法人 日本神経学会 てんかん治療ガイドライン2010
難病情報センター
小児慢性特定疾病情報センター
第48回 日本てんかん学会学術集会 ランチョンセミナー「Dravet syndrome:current status」 演者 Dr.Charlotte Dravet

発作

乳児期(0歳~1歳)

典型的なDravet症候群の初回発作は、生後1年以内(平均生後5~8ヶ月)の正常な発達を経ている乳児に起こります。

  • 熱性または無熱性
  • 全般性または一側性(身体の片側のみの発作)
  • 間代性(手足が突然に屈曲伸展してピクピク・カクカクと震わせるけいれん発作)あるいは強直間代性発作(四肢を伸展し小刻みに震わせる強直相に続き四肢をピクピク・カクカクと律動的に震わせる間代相を認める)

(しかし発病時の発作は多様性があり初回発作が焦点性発作のこともあります。)

初回発作後は有熱時でも無熱時でも発作を繰り返しおこします。

注)明らかなけいれん性発作が止まった後に、発作が一見おさまったように見えますが、非けいれん性重積発作が持続し意識障害が遷延する場合があります。意識混濁、意識障害と覚醒状態が混在している状態、顔面ミオクローヌス、眼振を伴う意識障害等を呈する場合は非けいれん性重積発作を疑い追加の投薬や検査が必要です。

てんかん重積状態の原因として、発熱、呼吸器感染、ワクチン接種、抗てんかん薬変更 が最も多いです。しかしながら原因不明の場合も多くあります。

[脳波] 1 歳前後まで正常である事が多い

 

幼児期(1 歳~5 歳頃)

発熱時にけいれん発作(間代性、強直間代性発作)をおこします。おこす発作の種類は個人によって違います。

 

ミオクロニー発作 : 一瞬「ビクッ」とする発作(0.5 秒以内)

病名の由来ともなった発作型ですが、この発作が生涯にわたり見られない場合もあります。
1.《発作時》 1歳前に出現することがあります(てんかん性)
汎発性で全身の筋肉、時に体軸筋を巻き込み、持っている物を投げ飛ばしたり転倒したりします。一部に光・図形刺激による誘発もありけいれん発作に移行することがあります。
[脳波]【3~4Hz 全般性(多棘)徐波】
2.《発作間欠期》 1歳~5歳の間にミオクロニー発作と同時期に出現します(非てんかん性)
発作間欠期ミオクローヌス
多焦点性のミオクローヌスが頻回にミオクロニー発作を持たない多くの患者にもみられます。安静時にみられます。発作が多い時期に悪化しやすいです。
四肢(遠位優位)か顔面筋が独立して巻き込まれ、随意運動で増加します。
特に年長の小児で、夜間けいれん性の発作の後の覚醒時に頻回にみられます。
[脳波]【対応する変化なし】

 

非定型欠神発作 :ミオクロニー発作と供に1歳~12歳に出現します

ミオクロニーや短い脱力を伴って頭部前屈や段付きで前傾することがあります。
ミオクロニーがなく反応性だけがない非定型欠神発作もあります。
脱力要素がより目立ったり、はじめと終わりがはっきりしないことが多いです。持続時間は3~10秒です。
[脳波]【2.5~3.5Hz 全般性棘徐波群発】

 

焦点性発作 :0歳4ヶ月~4歳の間に出現

二次性に全般化する(部分発作で始まった発作波が広がり全身性けいれんになる)こともよくあります。

  1. 運動型の単純焦点発作(稀):体の一部がピクピクと動く発作。意識あり。
    偏向発作(多くは頸の回旋運動)か、一肢や一側顔面に限局したけいれんあるいは両者の組み合わせの場合もあります。
  2. 顕著な自律神経徴候を伴う複雑焦点発作(多い):眼球偏倚があったり、ボーッとし意識がない発作
    反応消失(意識なし)
    自律神経徴候(蒼白、チアノーゼ、潮紅、呼吸変化、よだれ、発汗)、口部自動症(モグモグと口を動かす)、筋緊張低下まれに硬直、時に眼瞼や末梢ミオクローヌスを伴うこともあります。
    1回の発作の間に発作症状が変化する事もあります。
    (例えば眼球偏倚の方向が変わったり頸の回旋方向の変化などが見られます)


2010年にILAE(国際抗てんかん連盟)がてんかんの発作の分類を改訂した際 、部分発作が焦点発作として一本化されました。「焦点性発作 意識障害なし」が単純部分発作に、「焦点性発作 意識障害あり」が複雑部分発作の概念にほぼ一致します。二次性全般化発作の用語に変わるものとして「両側性けいれん性発作(強直、間代または強直・間代要素を伴う)へ進展」となります。
旧分類にあたる単純部分発作、複雑部分発作、二次性全般化発作も臨床現場では引き続き使用されています。

 

意識混濁状態(obtundation status) 幼児期~青年期

数時間~数日にわたって遷延します。
さまざまな程度の意識障害と、断片的で体節性、不規則なミオクローヌスから成ります。脳波検査をすることが診断に有用です。
意識混濁状態(obtundation status)はドラベ症候群特有の発作のタイプで、以下のものが含まれます。

  1. 《非定型欠神発作重積状態》
    顔面や四肢に出る不規則なミオクローヌスを伴う様々な程度の変動性の意識減損状態が長時間継続します。
    意識状態ははっきりしそうになりながら反応が途絶したり凝視する減損状態になる等変動を繰り返し、同時に様々な部位のミオクローヌスを認めます。
    [脳波]【同期性の悪い広汎性の徐波性律動異常に棘波・鋭波・鋭徐波が混在】
  2. 《複雑部分発作重積状態》
    意識減損や眼球偏倚が認められます。
    10分以上継続または意識がはっきりしそうになってもまた意識減損状態に戻るなど、短時間の間に繰り返す事も含みます。
    [脳波]【不規則な徐波や棘徐波が限局性・変動性に持続】

 

学童期以降(6歳~)

ミオクロニー発作、非定型欠神発作、焦点性発作は減少・寛解傾向が見られます。
けいれん重積も減少傾向になることが多いです。 突然死の報告は6歳頃に多いようです。

 

思春期以降

全身けいれん発作は引き続き発熱時や睡眠中に起こります。
発熱によるけいれん誘発(発熱過敏性)は軽減し、けいれん重積も起こりにくくなるとされています。

以上のように年齢・成長とともに発作の形が変わってきます。 しかし発熱過敏性があるのは変わりなく、幼児期や学童期でも発熱時に重積や群発状態になることが多々あります。 すべての発作は抗てんかん薬治療に抵抗性で、軽減・減少することはあっても消失することは稀です。

発作の誘発因子

【温度の変化(少しの温度差で発作をおこします)】

体温の変化で発作を誘発することが多いですが、環境変化の温度差でも発作を誘発することがあります。
入浴の際は、浴槽の温度を下げ(少なくとも40℃以下、出来れば38℃前後)長湯を避けたりシャワー浴にする、冬は脱衣所を暖める、脱衣所に出る前に身体を拭き衣服を着る、などの配慮が必要になります。

 

【感染したとき(発熱がなくても発作をおこします)】

免疫学的な研究では説明できてないですが、感染症にかかりやすいことが知られています。感染症にかかると発熱以前に発作がおこることもあります(予告発作とも呼ばれます)。

 

【光(間欠的光刺激か明るい環境下、強い明暗差で反応。光量に依存。)】

光刺激による発作誘発傾向(光感受性)が持続するグループは治療抵抗性を示します。

 

【模様(ドットや格子柄、千鳥柄、縞模様 等)】

日常環境下でのあらゆる種類のコントラストの変化を伴う模様は発作を誘発する可能性があります(模様感受性)。例)壁、網戸、ブラインド、衣服、子供向け本の文字、デザインの幾何学模様、点線 など光感受性及び模様感受性は、自己誘発を伴うこともあり極めて薬剤抵抗性です。
間欠的光刺激や模様刺激に対し、Z1 レンズもしくは光学的特性が同等のレンズで反応性が低下(光刺激で約 75%の患者で消失)という研究があります。
光刺激や模様刺激による発作には専用の眼鏡の着用が効果的です。
発作が起こりそうな場合は、目をそらせるほかに、片目を遮蔽することで発作が起こりにくくなる場合があります。

 

【まばたき、閉眼(強い明暗差を作るから)】

 

【運動(体温上昇による)】

 

【感情の変化(ストレス、興奮、緊張状態からの解放:外出からの帰宅でほっとする、など)】

 

【音】

 

【ストレス】

 

患児によって誘発因子が各々違いますが、体温変化(熱過敏性)は共通して発作を誘発します。

急性脳症

上気道炎などで発熱中にけいれん発作重積が出現し、その後昏睡状態に陥ります。発作重積はしばしば治療抵抗性で、時に数時間に及びます。
発作は頻回に繰り返すわけではありませんが意識障害が遷延し、重度の後遺障害を残すことがあります。死亡例もあります。
頭部 CT や MRI、脳波(高振幅徐波)等から診断します。

また、二相性脳症(痙攣重積型脳症)という指定難病の脳症になることがあります。

ドラべ症候群では急性脳症の合併が稀ではなく死亡することもあります。

重積発作を抑制することができてもその後の意識回復の悪い時は、急性脳症の合併を疑い集中治療を行う必要があります。
脳症かもしれないと思ったらこちら

死亡率と突然死

日本での調査では、死亡率は 10%(63/623人、2011年報告)でした。(坂内らの報告)
その原因としては、てんかん重積を伴う急性脳症、溺死等の事故、原因不明の突然死(SUDEP:Sudden unexpected death in epilepsy)などがあげられます。
(ドラべ症候群希少疾病用医薬品であるディアコミット(一般名:スチリペントール)が日本で販売される前の統計・報告であることや近年の治療の進歩によって、現在の状況は変わっている可能性があります)

SUDEP(てんかん患者における原因不明の突然死)は一般には小児よりも成人で多いですが、ドラベ症候群では最近発作の悪化がなく定期的に薬物療法を受けていた小児(特に 6 歳前後)の睡眠中に最も多いという報告があります。
SUDEP についてはあらゆる種類のてんかんに関して活発な研究がされています。
SUDEP のメカニズムは未だ解析できていませんが、不整脈や低換気・低酸素やてんかん性発作活動との関連が示唆されています。
気道閉塞と呼吸機能低下になる可能性を最小限にするためには、
睡眠中の子供を頻回に観察する事や、うつぶせ寝を避け窒息しにくい枕を使用する、周りに大きなぬいぐるみを置きっ放しにしないなどの、一般的な乳幼児に対するものと同様の注意により危険性を減らす事ができます。
モデル動物の実験では、睡眠中の短く強いけいれん発作の後に心停止となる事が報告されています。 いかなる年齢でも死が訪れる可能性がありますが、小児期の特に 6 歳前後に最も頻度が高いです。

*ドラベ症候群はてんかんの中でも、世界中で最も広く活発に研究されている疾患の一つです。突然死が起こりうることは、健常な乳幼児や他の疾患でも同じことですが、最も研究されているためにドラベ症候群にはこの様な統計結果があり、家族や監護者は突然の事態にも備える事ができます。

こういった研究結果公表によって、患者が通園通学等の際に疾患による差別を受けることのない様に患者会としては様々な機関と連携を取りながら十分に注視を行なっていきます。

参考資料
てんかん症候群 乳児期・小児・青年期のてんかん学(第5版) 中山書店
小児内科 Vol.46 No9 2014 9 月号 東京医学社
てんかん重積最前線 91 CLINICIAN ’13 No.619 久保田有一
子どものけいれん・てんかん 奥村彰久 浜野晋一郎 編集 中山書店
稀少難治てんかん 診察マニュアル 大槻泰介 須貝研司ら 編集 診断と治療社
てんかん情報センターホームページ 独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター一般社団法人 日本神経学会ホームページ 「てんかんとは」
第48回 日本てんかん学会学術集会 ランチョンセミナー「Dravet syndrome current status」 演者 Dr. Charlotte Dravet

発達

発症まで発達は正常ですが、発症後に発達が停滞傾向となります。
精神運動発達遅滞は2歳までに現れます。
大部分の患者が中等度以上の遅れが見られますが、程度は様々です。

視知覚、目と手の協調、表出言語、遂行機能(論理的に考え、計画し、問題を解決し、推察し、行動するといったこと。また、自分のした行動を評価・分析すること)などが他の機能より障害されることが示されています。不器用さは後に明らかになってきます。

できるだけ早く患児の発達を定期的に評価することが勧められています。
早期からの適切な教育・療育やリハビリが発達に良い影響を与えると考えられています。

最近の報告では、治療薬の進歩による恩恵もあるためか、患者の発達の遅れは様々で、時にほとんど遅れが見られないか、軽度~中等度の遅れのみの方もいます。

 

神経学的徴候

運動失調・振戦・不器用さがたいてい報告されています。

【低緊張】

最も早期の徴候であり、1歳前後で気付かれます。(ほぼ100%)

【運動失調】

患児が歩き始める頃に気付かれます。はじめは歩行の遅れだけのように見えますが、歩行は不安定のままであり支持土台が大きく協調運動の弱さを伴います。歩行開始時は足を横に大きく広げ、腕を挙げたまま(high guard)ふらふらと歩行し、腕の振り出しが出現するのには時間がかかります。年齢と供に目立たなくなる傾向がありますが、長期間認められます。(約50~80%)

【錐体路徴候】

下肢の深部腱反射の亢進を認めたり、Babinski 徴候(異常な足底反射)を伴うことがあります。小児の患者はしばしばつま先で歩行します。けいれん性の発作を繰り返す時期には悪化する傾向があり、発作間隔が空くと改善します。

【構音障害】

思春期や成人期には簡単な会話が可能なこともありますが、構音障害(発音が正しくできない)を伴い、常同言語(一見意味のない言葉や言い回しを言い続ける)や反響言語(他人が発した言葉を繰り返し発声する)も見られます。

【歩行障害】

神経学的徴候と骨格の異常変形(多くは扁平足で、その他は脊椎後彎症、脊椎後側症、歪曲足:claw foot)が重複するため、しばしば運動機能が低下し‘かがみ歩行(crouch gait)’という特有な姿勢となります(図5)。
図5:かがみ歩行
思春期に顕著になり、年々悪化していきます。個人差はありますが、筋力のついてくる 3~5歳頃から専門医のもとで側彎症等の徴候の出現に注意し、異常が認められる場合はレントゲンでの確認および筋緊張を改善するリハビリを行う事が有効です。
扁平足にはさらに早期から足底板(インソール)を作成し足首をサポートする靴(ハイカットシューズ)などで変形を予防、改善する事が重要です(図6、7)。
図6:外反扁平足 図7:インソール

【自律神経症状】

四肢の冷感、四肢の発赤や蒼白、発汗の変化、瞳孔散大、胃からの排泄遅延、 頻脈のエピソード、顔面と胸部の原因不明の潮紅などが見られることがあります。

【錐体外路徴候】

振戦、固縮(骨格筋の緊張状態上昇)等を認めた報告があります。

【嚥下障害】

呼吸器感染症をおこし、胃瘻造設した成人患者の報告があります。

【摂食障害】

しばしば見られます。咀嚼がしにくいこともあります。

【成長障害】

しばしば見られます。咀嚼や嚥下の問題、消化か遅いこと、抗てんかん薬の副作用による食欲減退など複数の要因によって起こります。

【睡眠障害】

ドラべ症候群の症状のひとつで、成長するにつれて睡眠障害(入眠障害や夜間・早朝の覚醒)が頻繁に起こることがあります。
また、発作の起こる時間帯に関連して引き起こされることがあり、その場合は抗てんかん薬の服用時刻の調節を考慮すべきであるとされています。メラトニンや睡眠導入剤の処方が有効とされていますが、症状のひとつのため改善が難しいことがあります。
日中の活動を増やし、睡眠・覚醒等生活のリズムを整えることが役立つ事もあります。

 

精神運動と認知の発達

【言語】

正常年齢に出現しますが、言語発達は極めて緩徐です。
多くの患者は簡単な文章が言える段階には至りません。
言われていることは理解できますが、自分で言葉や動きで表現することが苦手な傾向があります。

【自閉傾向】

集中力低下(最も多い早期の特徴)、多動(1~2歳)、強情さ、頑固さ、対人関係の困難さを認めます。
実際に自閉症である患児は少ないです。自閉傾向が強い場合、QOL 向上のために薬物治療(例:リスパダール(一般名:リスペリドン)、エビリファイ(一般名:アリピプラゾール))が選択される事もあります。

【知的障害】

大部分の患者では、生後数年以降から更なる知的な低下は見られませんが、知的な成長が見られなくなったり、緩徐になったりする傾向があります。従って、就学前に軽度の遅れであったように思われた子も思春期や成人期には重度の認知機能障害を呈するようになることがあります。

【巧緻運動機能障害】

分節ミオクローヌスや小脳失調症状のひとつである視覚と手の協調障害によって巧緻(上肢の細かい動作や作業をする)機能が不安定になります。
日常生活や遊びで必要とする器用さを獲得する妨げになります。
ほとんどの患者が図柄を描くことが出来ず、活字体で文字を書く事がなんとかできるようになるくらいです。
パズルを解いたり、漫画を繰り返し読んだりするのは得意となります。

思春期や成人期では、患者はむしろ穏やか・受動的で他人との愛着を求め反復性の保続がみられますが一部の患者では強迫的態度、発作性の攻撃性、夜間の興奮、稀に急性精神症状がみられます。

大変好ましくない発達の予後は、かなり昔に診断され適切な治療をうけることができなかった患者において見られています。

発達と発作の関係性

神経心理学的な障害の現れは、2歳までのてんかんの重症度と関係しているようです。
けいれんの合計回数・持続時間と知能低下の程度の間には関連が認められています。
つまり、幼少時のけいれん性発作の抑制が重要である可能性があります。

(注:けいれんの少ない人は、けいれんが少ないから知能がいいのではなく、もともとのてんかんの程度が軽いのでけいれんがすくなくて知能もいい、という可能性も十分に考えられ、その場合はけいれん治療の良し悪しが知能予後に大きな影響を与えない可能性もあります)。

ミオクローヌスや欠神発作の早期出現が認知機能低下への悪い影響を与える可能性が示唆されています。

参考資料
てんかん症候群 乳児期・小児・青年期のてんかん学(第5版) 中山書店
子どものけいれん・てんかん 奥村彰久 浜野晋一郎 編集 中山書店
第48回 日本てんかん学会学術集会 ランチョンセミナー「Dravet syndrome current status」 演者 Dr.Charlotte Drave